共同体における富の備蓄と再分配機能
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概要
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世界経済は,資本制関係が支配的な領域と先資本制関係が支配的な領域との併存・結合として定在しているが,後者を多くの場合に特徴づけるのは,そこに共同体が強固に現存していることである。本稿では,共同体社会の独自的な性格を規定する内的論理はいかなるものか,という問題意識から『資本制的生産に先行する諸形態』を軸にマルクス共同体論の検討を行った。そこには,従来の共同体論が主に所有形態論を軸に展開し,共同体所有の基礎上に展開する共同体の内的論理の解明が充分になされてこなかった,という批判意識がある。検討の結果から次の点が明らかになった。共同体社会では,諸個人の生存と再生産を保証する質・量の使用価値を生産し確保することが経済活動の目的となっているが,この目的を実現するうえで必要な自然的生産諸条件の所有形態が共同体所有である。しかし,共同体の目的を達するためにはこのような所有形態があるだけでは充分でなく,さらに, 諸個人が事故や病気などによって充分な消費財や翌年のための投入財を生産するに至らない場合に備えて,生産物の備蓄や再分配を通じて生産活動の結果を共同体内で事後的に調整することもまた必要である。
- 2008-12-11
著者
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