聖書学は<イエス批判>に向かうか : 「宗教批判の諸相」に寄せて(<特集>宗教批判の諸相)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
キリスト教の内部批判として二百年以上前に誕生した「聖書学」は、歴史学と人間学に基づいた学問である。そうであれば、現段階に至って、その「批判」の対象を、キリスト教会や聖書文書だけに留まらず、人間イエス自身にも向けるのは当然と言わねばならない。教祖をあえて批判するという「不敬」こそ、今のキリスト教のキリスト論には必要と思える。それによって初めて、イエスの何が重大なのかが反省されるであろう。そもそもイエスは、人間として幾度も飛躍して最後の刑死の姿に至った。そうであれば、いわゆる公生涯の大部分において彼が語った言葉も、究極の妥当性を持ったものばかりではない。そこには、その終末論的時間感覚のごとく現在の私たちにはそのままでは通じないものもあれば、その威嚇的態度や自己使命の絶対化とも思える意味づけ等、教会が暗黙の内に真似をして悲劇的な自己尊大化を招いたものも存在する。現代の私たちは、こうした面のイエスに直線的に「まねび」の対象を見出してはならない。むしろ、そのゲツセマネの苦悩を通過した後、ゴルゴタで絶叫死するまでの沈黙から響いてくるものをこそ最も貴重な指針として全体を構成し直す必要があると思われる。
- 2008-09-30
著者
関連論文
- 大貫隆著, 『グノーシス「妬み」の政治学』, 岩波書店, 二〇〇八年七月一八日刊, 四六判, xxviii+二六八+二〇頁, 三二〇〇円+税
- 聖書学はに向かうか : 「宗教批判の諸相」に寄せて(宗教批判の諸相)
- アポロ伝承小史 (新約聖書学特集号)
- 「百聞は一見にしかず」 : ガラリヤで解けた二つの釈義的問題
- M.ボーグ著・小河陽監訳『イエス・ルネサンス』
- J・L・メイズ編日本語版編集・荒井章三他『ハ-パ-聖書注解』
- 木田献一著『旧約聖書の預言と黙示』
- ヤコブ書の神学的構造--その「契約的遵法主義」
- 新約聖書のルーツを求めて : その統計解析(失われゆく情報の復元・保存技術 : 人文科学における情報処理(文献学・データベース共有・史科編纂))
- 因子分析による共観福音書問題の解析 (特集"ことば"新研究)
- LSAによる共観福音書問題の解析
- 「初期ユダヤ教と聖書」土岐健治
- 聖書の人間像 イエスの父はいつ死んだか
- 『トマス福音書』と禅 (特集 新約聖書とは何か--福音書とイエスをめぐるミステリ-)
- 宗教人間学の視座 : そこからイエスを見ると
- 笠原芳光『イエス 逆説の生涯』を読む
- 「復活」信仰の成立 (特集 聖書は知られているか)
- イエスの語録資料(Q資料)と預言者の伝統--旧約から新約へ?
- 巻頭言
- 発題3 イエスの「人間化」の先は?
- アポロ伝承小史 (新約聖書学 特集号)