理科における視点移動能力の習得に関する一考察 : 「地球の自転」の指導において
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概要
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理科学者において,視点移動能力は重要な役割を果たしている。左右,上下,前後(表裏),角度,方位などの方向概念,対称概念及び回転概念は,視点移動能力を基にして形成される。これらの空間概念は,天文教材等の空間的な広がりや相対的な位置・運行関係などを認識する上で欠かせないものであるからである。しかしながら,我が国で,視点移動能力の習得は,単元目標や授業目標として明確に位置付けられておらず,理科学習で十分に習得されているとは言い難い実情があり,実践レベルの指導法の研究が待たれている。そこで,本研究では天文教材,単元「地球の自転」の指導において,生徒に地動説的な考察を行わせる過程で,空間認識(概念)の形成を支える視点移動能力を見いだし,その視点移動能力の訓練と習得そのものを単元目標と授業目標に位置付けた。また,それらの目標を達成するための一手段として,生徒自身が授業中に製作し完成させていく,透明半球を利用した班学習用教具を開発した。そして,新たに設けた目標と班学習用教具を組み入れた実践的カリキュラムを作成し,それに基づいて中学校1年生を対象に授業実践した。その結果,授業の活動状況や評価資料等から次の諸点が明らかになった。(1)新たに設定した視点移動能力の訓練と習得に関する単元目標と授業目標は妥当なものであり,生徒に天体に関する空間認識(概念)を支える心的操作を中心とした視点移動能力の訓練と習得を促す上で,班学習用教具は有効であった。(2)上記(1)の方向概念,対称概念及び回転概念や相対的な位置・運行関係などの天体に関する空間認識(概念)の形成が有機的に機能し,生徒は地動説的な考察を行えるようになった。
- 2000-07-31
著者
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