戦争・テロは生命倫理の課題か : 殺人の正当化と寛容律
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概要
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宗教は現代では戦争を引き起こす大きな要因である。ある宗教集団が、他の宗教集団と共存可能であるということは、共存する二つの集団が、それぞれ他の集団への寛容を持つということである。西欧型寛容論の典型を示すピエール・ベール(1686-87)は「宗教を吹き込む唯一正当な方法は、明らかに、神に関する一定の判断と一定の意志の動きを心の中に生じさせることである」と述べて、宗教は内面的な真理であり、軍事力・法的強制力・世俗的な影響力などの外面的な強制は、宗教の本質に一致しないと主張した。この寛容概念は聖俗二元論に依拠している。その二元論を否定するのがイスラム教の特色である。「イスラームは、存在の全体をそっくりそのまま宗教的世界と見る。イスラームの見る世界は、聖なるものによって一切が浸透された、あるいは浸透されなければならぬ世界として描写される。」(井筒俊彦)現在、対立しあっている宗教は、一見するとまったく共通の原理を持たないように見える。しかし、それぞれの教義の原典そのものが、排他的であるかどうかは、別問題である。われわれは、教義の原典の核心をつかみ、すべての宗教の外皮を剥がして、その根源の教義が相互に両立不可能であるかどうか、吟味しなければならない。
- 2007-09-20