インフォームド・コンセントの「教育モデル」の可能性 : 医療場面の質的な分析から
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概要
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従来、患者の自律・自己決定権を尊重するインフォームド・コンセント(以下ICと略記)の法理のもと、医師は「説得」に偏ることのない客観的な説明を行うことが求められてきた。しかし、言語行為論や社会構築主義の見地からすれば、実際の医療場面において「説明」は「説得」と不可分である。このように、法理に基づく患者-医師関係と実際のケースとのあいだには大きな乖離があって、ICの法理を個々のケースに一律的にあてはめて考えることはできない。そのため今日にあっても、偶然性に左右されるケースに医師がどのように向き合えばよいのかが喫緊な問題として残されている。そこで、本稿ではICの「教育モデル」を提案する。本モデルにおいては、個々のケースにおける患者の語りを詳細に記録することで、医師が患者を把握すると同時に、自らの患者に対する見方を自覚的に反省する契機としてICを考える。さらに、患者を医学的知見に基づく「患者」としてだけでなく、さまざまな人生観や価値観を有する社会的生活を営む「個人」として捉えることで、重大なIC場面にも対応できるような医師の高度な判断力を養成する可能性について探究する。
- 日本生命倫理学会の論文
- 2006-09-25