利用に先立つ胎児の地位 : イギリスにおける胎児組織ガイドラインの変遷から
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概要
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胎児組織の利用についてまとめられたイギリスの一連の文書は、胎児組織の利用について、そもそも母親が同意権者たりえるのかといった点や、胎児が生きているうちに中絶後の胎児の利用について同意をすることそのものの是非といった点についてはあいまいな点を残している。しかし、これらの文書の一つであるポーキングホーンレポートは、生きている胎児が単なる研究利用の対象として道具的に扱われるべきではなく、生きている胎児への尊敬は、遺体への尊敬同様に死亡した胎児へと継続すると述べ、その後イギリスで胎児について言及される文書は、その姿勢を保っている。中絶に関する法規制が異なる国の取り組みではあるが、本稿で検討する一連の文書の、胎児に一定の道徳的地位を規定して、その上で利用要件を示すという姿勢は、わが国にとっても一つのあり方として参考にしうるものであろう。
- 2005-09-19