日本におけるミュージアムの提供する価値の再検証 : 経験価値を中心として
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概要
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現在、わが国のミュージアムは複雑化した顧客ニーズに対応できておらず、公共の文化施設としての社会的存在意義を確立しているとは言い難い状況にある。このような状況は日本のミュージアムが過度なプロダクトアウト志向にあり、事業活動の質を高めることは文化教育機関としての専門性を追求することと認識し、顧客のニーズに目を向けないことに起因している。このことから、本報告では顧客ニーズの適合を図るために「経験(experience)」という概念を用いてミュージアムの提供する価値を再検討する。ミュージアムの提供する価値とは博物館資料を通して顧客が驚きや感動を得ることであり、その価値とは個人的なものであり記憶に残るものである経験という新しい経済価値の特徴と一致するところが多い。ミュージアムの提供する価値を経験と捉えなおすことが顧客ニーズとの適合を図る第一歩になると考えられる。そこで、審美的・教育的・娯楽的・非日常的という4つの経験領域という視点からミュージアムの提供する価値は経験という枠組みでどのように分類されるかを検討する。この分類により、複雑化する顧客ニーズのポイントは伝統的な機能に基づくミュージアムの事業活動ではあまり注視されてこなかった娯楽的・非日常的な経験であると判明した。しかし、ミュージアム独自の事業活動に基づいた審美的・教育的な経験の重要性が低くなったのではなく、新たなポイントである娯楽的・非日常的な経験を含めた4つの経験領域すべてを跨ぐ複眼的・複合的な経験価値の提供が最も重要であるといえる。
- 2008-06-27
著者
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