リュースブルクの『十二人のベギンたち』における異端的言説批判 : <エックハルト後>における<神と人間との一致>のテーマ再構築の企て
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概要
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本稿は、中世ブラバントの神秘思想家ヤン・ファン・リュースブルクを取り上げ、異端的言説へ向けた彼の批判を検証しつつ、<神と人間との一致>というテーマに対する彼独自のスタンスについて考察する。彼は、教会教義に抵触する仕方で<神と人間との一致>を主張する言説を、その著作『十二人のベギンたち』において批判する一方で、別の著作『解明の小書』においては、自らの説く<一致>理解を教会教義に即して正当化している。同じく<一致>を唱えたドイツの神秘思想家マイスター・エックハルトの諸教説が、教皇勅書によって排斥された出来事(一三二九年)の影響下で、リュースブルクはこのテーマをカトリック教義の礎石の上に再構築し、正統的信仰と神秘主義的真理とを共に護ろうとしたのではなかったか。本稿は、こうした彼の意図をテクスト分析によって取り出し、<エックハルト後>の時代におけるリュースブルクの位置を明らかにする。
- 2008-06-30