フランクルと滝沢における「過去存在」の思想 : 田辺の<死の哲学>との関連で
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
田辺の<死の哲学>は、他者としての死者を対象としている点で画期的な意義を有する。しかしながら田辺の<死の哲学>の問題点として、<絶対無の働き>と<死復活という行>との不可逆の関係が曖昧なこと、および死者が絶対無にどのような仕方で入れられているのかが不明であること、この二点を指摘できる。フランクルの「過去存在」の思想では、人生における人間のすべての営みが過去存在として永遠に保存される、と主張される。滝沢においては、死者は過去存在として絶対無に入れられており、フランクルとの大きな類似が見出される。滝沢の思惟の根底には常に「神人の原関係」があり、「死ぬ」ということも神人の原関係から、或は神の空間(絶対無)から脱することなどではあり得ない。死者を絶対無における「過去存在」として捉えることによって、死者と死者の記憶は区別され、さらに幽霊現象も視野に入り得るのである。最後に幽霊現象を扱ったベルゲングリューンの珠玉の短編が紹介される。
- 2008-06-30