特集II-4 聾学校における新設領域「養護・訓練」に関する調査研究(<特集II> 養護・訓練をめぐって)
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概要
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昭和46年に全面的に改訂された特殊教育諸学校の学習指導要領の特色の一つは、「養護・訓練」という特別の新しい領域が加えられたことであった。この研究は、聾学校において、この新設領域がどのように受けとめられているか、指導計画にどのように組み込まれているか。また実践に当たって問題となっていることは何かということを明らかにすることにあった。研究の方法は、全国108の聾学校に質問調査票を郵送し、各学校の養護・訓練の領域の専任教師ないしは関係する教師に回答を求めた。一部の学校に筆者が出かけ、得られた情報を資料に加えた。調査は昭和47年の7月から8月の期間であった。主な調査結果は以下のとおりである。1.108の聾学校のうち97校から回答が得られた。2.そのうち養護・訓練の専任教師が配置されている学校は52校で、1校当り専任教師は1ないし2名であった。3.専任教師としては、教職年数の長いベテランの教師、聾幼児の言語指導の経験をもつ教師、あるいは電気音響的知識や技能を有する教師などが配置されている場合が多い。4.専任教師が不在の学校の事情は、教員数の不足や専門技術者がいないために、養護・訓練の領域の指導は、全校教員が当たるという方針をとつている学校が多い。5.授業時間数は、学校や学年によって異るが、高学年になるほど時間数が減少する傾向がみられる。6.授業時間の設定の方式として、短時間方式(short-time)、単位時間方式(long-time)および併用方式の三通りがある。7.個別指導の形態をとっている学校よりも集団指導の形態をとっている学校のほうが多い。8.指導の内容は多岐にわたっており、発音指導、読話指導、聴能訓練、感覚訓練、作文指導、会話指導、指文字指導などである。9. 評価や記録の方法については、個人別の累積記録票やチェックリストの作成など多くの学校において検討している段階である。10.施設や設備などの不十分な点を不満としている学校が多い。以上のような調査結果から、養護・訓練に対する教育現場の受けとめかたがきわめて多様であることがわかった。この新設領域の目標達成のためには、個々の聴覚障害児のneedに応じて、個別的、計画的に指導していかなければならないが、そのためには、臨床的な観点に立って児童の問題をとらえる姿勢が教師に厳しく要求されているといえよう。
- 1973-03-01
著者
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