特集II-1 触覚弁別力検査の試み(<特集II>養護・訓練をめぐって)
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概要
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触覚弁別力検査作成の試みとして、1.形の弁別(25題)、2.長さの弁別(16題)、3.大きさの弁別(20題)4. 粗滑の弁別(20題)、5.重さの弁別(10題)からなる検査を作成して、盲児に実施した。被験老は我国の盲学校小学部1年から6年に在学する盲児延273人である。なお正眼児との比較を行なうため、小学1年から6年まで、各学年10名、計60名の被験者に目かくしをして検査を行なった。結果は以下のようである。(1)総点及び下位得点の学年的発達、まず総点についてみると、小1、小2、小3の間と小4、小5、小6の間には有意な差がみられないが、小3と小4の間に有意な差がみられる。いわば、小3と小4の間に発達がみられる。下位検査についてみると形の弁別では小3と小4の間に有意差がみられるが、小1、小2、小3の間と、小4、小5、小6の間には有意な差はみられない。長さの弁別では、小1から小6までのいずれの学年の間にも有意な差がみられず、学年的発達はみられない。大きさの弁別では、小3と小4の間には有意な差がみられるが、小1、小2、小3の間と、小4、小5、小6の間には有意な差はみられない。小3と小4の間に発達がみられる。粗滑の弁別でも、小3と小4の間に有意差がみられるが、小1、小2、小3の間と小4、小5、小6の間に有意な差はみられない。小3と小4の間に発達がみられる。重さの弁別では、小1から小6までの各学年の間に有意な差はみられない。学年的な発達はみられなかった。これから、総点、形の弁別、大きさの弁別、粗滑の弁別では小3と小4の間に発達がみられるが、長さの弁別、重さの弁別では小学1年から6年までの間に発達はみられない。以上の結果を検討して、偏差値などの換算表を作る場合、小学校低学年(1年〜3年)と小学校高学年用に分けて作るのが望ましいと思われる。(2)総点と下位テスト及び下位テスト相互の相関、総点と下位テストとの相関は最低0.344最高0.747となり、総点と各下位テストとの関係が高いことがわかる。下位テスト相互の相関をとると、総点と下位テストの相関にくらべれば低い。それだけ各下位テストが独立した能力をみていることになる。(3)各問題の正答率 本検査の合計91の問題について、正答率を調べたところ、予備検査と同様の結果が得られた。即ち、形の弁別では同種の形からの弁別の方が異種の形からの弁別より困難なこと、大きさ、長さ、粗滑、重さの弁別では、2つ刺激の差が小さくなるにつれて正答率が低くなる。(4)性差 総点及び下位テストの得点を男女別にみると、ほとんどすべての学年で、総点及び下位テストにおいて性差はみられない。(5)触覚弁別力と知能の関係 総点と知能の相関係数は低学年γ=0.23、高学年γ=0.40となり、どちらかといえば低学年の方が相関は低いが、低学年、高学年とも相関がみられる。また、総点をパーセンタイルになおして上、中、下にわけてみると上群中群の知能指数には差はないが、中群と下群の間には知能指数の差がみられた。いわば、知能が普通以上であれば、本検査で高い得点をとることができる。また、各下位テストと知能の相関をみると、形の弁別が知能との相関が、他の大きさ、長さ、粗滑、重さの弁別に比して高いことを示している。(6)学力と触覚弁別力の関係 総点と学力(国語、社会、算数、理科)との相関をもとめたところ、低学年高学年を通じて、最低γ0.206から最高γ0.717という数値を示し、知能との相関と同じように、総点と各教科との相関は高いとはいえないが相関はあるといえる。総点を上、中、下にわけてみると、上群と中群の間に学力の差はほとんどみられないが、中群と劣群の間に学力の差がみられる。学力の低い群は、本検査の結果が悪いが、学力が中以上であれば、本検査で高い得点がとれることを示している。(7)正眼児との比較 目かくしをした正眼児との比較を行なったところ、総点においては盲児が正眼児よりもよかった。下位検査についてみると、形の弁別、長さの弁別、大きさの弁別では盲児の方が正眼児よりすぐれていたが、粗滑の弁別、重さの弁別では盲児と正児の間に有意な差はみられなかった。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1973-03-01
著者
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