自閉症児における「能動-受動」のやりとりの発達的変容 : 遊びを通した関係性の成立に焦点を当てて(実践研究特集号)
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概要
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自閉症男児を対象に6歳1ヵ月より関わりを開始した事例研究である。本児は人との関わりが乏しいことや、やりとりが育たないことが特徴的であった。本児の遊びを見守り、また、一緒に遊ぶことで生じる本児の情動に触れて、信頼関係を築くこと、さらに、その繋がりを基盤に「能動-受動」のやりとりを形成していくことを目的とした。I期において本児は、トランポリンの揺れによる感覚的な刺激に興味を示した。筆者はトランポリンを揺らし、本児の感覚的な遊びの世界を尊重することで、遊びの場に受け入れてもらうことが可能になった。II期においては、本児が興味を示した長方形の枠を画用紙に描き、その枠内に色を塗る一連の遊びを尊重し、別の画用紙に本児の描いた絵と同じ絵を描くことにした。すると徐々に、筆者の描く絵に興味を示し、色を塗ることを要求するようになった。絵に色を塗ることで遊びを共有することが可能になった。III期においては、絵を描くことを通した遊びから、引いたり、引かれたり、押したり、押されたり、「能動-受動」の身体を使ったやりとり遊びへと発展した。自閉症児が、信頼できる他者との関係性を基盤に、共有世界を拡げていくことの重要性が示唆された。
- 2000-03-30