重症心身障害児における常同行動の減少について : 視覚と手の初期行動形成との関係を中心に
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概要
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本研究では、重症心身障害児における常同行動減少の主要変数は、感覚・運動の操作性の高次化-初期行動形成-をめざし、対象児に対応した系統的・継続的な指導を用意することであるとの立場に立って、常同行動の激しい一重症心身障害児について約2年間指導してきた。事例がわずかに行っていたhand regardに視覚的機能を認め、基礎的な視覚行動形成を指導目標とした結果、事例は約2年後には不十分ながら到達-把握行動を示すとともに、常同行動は全般に減少した。この過程を検討すると、事物の操作に必要な手の運動は、事例自身の常同行動に含まれる手の運動と密接な関係があること、視覚と手の初期行動形成とともに常同行動は部分的な変化をへて減少ないし一時的になることが明らかとなった。特異性や非発達性に常同行動の本質があるとの従来の主張に対し、常同行動は事例に対応した系統的で継続的な指導によって高次化される基礎になりうることが指摘された。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1982-09-30