ダウン症児の異なる知覚様相間の弁別反応についての実験的研究 : 刺激提示による弁別反応への効果
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概要
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ダウン症児の異なった知覚様相間における弁別について、簡単な幾何学図形を用い、提示条件との関連において実験的に分析しようとした。すなわち、触知覚と視知覚の間の弁別について、観察は触知覚により、反応時(再認)は視知覚によって、あるいは観察時が視知覚のばあい、反応時は触知覚によるというように、観察時の知覚様相と弁別時の知覚様相が異なる方法による弁別反応を、刺激図形の提示のし方との関連によってどのように異なるかが2つの実験によって検討された。実験Iでは、継時提示によるばあいで、2つの条件が設定された。それは、刺激図形を触知覚で観察したのち、視知覚で弁別する触知覚-視知覚条件と、視知覚で観察したのち、触知覚で弁別する視知覚-触知覚条件である。実験IIは同時提示による知覚様相間の弁別について、2つの条件で検討された。1つは、刺激図形の観察を触知覚で行ないながら視知覚で弁別するという、触知覚-視知覚条件、他の1つはその逆で、視知覚で観察しながら、触知覚で弁別するという視知覚・触知覚条件である。被験者は、実験Iと実験IIを合わせて、ダウン症児44名、非ダウン症児44名、普通児44名の計132名である。なお、非ダウン症児のMAとIQは、ダウン症児のMAとIQに大体対応するものが選ばれた。また、普通児のCAは、ダウン症児のMAに大体対応させて選ばれた。その結果、つぎの2点が見出された。(1)継時提示によるばあい、ダウン症児は、触知覚-視知覚条件、視知覚-触知覚条件ともに、非ダウン症児と普通児より劣った弁別成績を示す。(2)同時提示によるばあいの知覚様相間では、ダウン症児は、触知覚・視知覚条件と視知覚・触知覚条件のどちらも、非ダウン症児と普通児との間に、弁別反応で明白な差異はみられなかった。以上のことから、ダウン症児の触知覚様相と視知覚様相の間の弁別反応は、刺激図形の提示のし方の相違によって、影響をうけることが示唆された。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1982-03-31