ある漁村の成人知的遅滞者の生活状況について : 地域社会における精神薄弱問題の社会学的研究
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概要
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中部太平洋岸の小漁村における成人知的遅滞者の生活状況の特徴とその社会的背景について検討した。資料は知的遅滞者の家族・職場関係者、村人との面接資料、および関係事務所の文献資料である。世帯数371、カツオ・マグロ遠洋漁業を主産業とするこの村では、男子知的遅滞者は1人前に働きうる存在であり、就業し家庭を持っているものが多い。女子の場合、結婚するか、さもなくば次世代の家族に扶養されている。村人の態度は受容的であり、知的遅滞が問題になることは比較的少い。このような知的遅滞者の生活状況を支える社会的背景として、地域社会の主産業である漁業の技術的単純性、職場適応への良い教育環境、職場・地域社会における強い血縁的紐帯、漁業利益配分における古い平等原則の残存、世帯間の生活様式の類似性、家計収入面での利害の共有性、古くからのつきあいの緊密性、しつかりした家制度の残存などの要因が考えられた。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1978-03-15