わが国の公立学校における制度としての文書管理の現状と課題
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
わが国の学校において、1990年代に注目を集めた情報公開問題は、多くの地方公共団体で指導要録の全面開示が決定されるなどして一定の進展をみせた。しかし、情報公開を実施するための文書管理の方策、特に文書管理規則等のような制度に関する検討は今後の課題である。国の行政機関における文書管理は、「行政文書の管理方策に関するガイドライン」に沿うこととされたため、文書管理規則等については、以前にみられた省庁間における差異は、問題を残しながらもある程度解消されている。これに対し、地方公共団体では、現在でも文書管理に関する制度は地方公共団体によって区々であり、文書管理規則等の内容に相当の差異が認められる。そのなかでも、学校は教育委員会の下におかれているため、差異の程度が複雑になっている。そこで、本稿では東京都特別区を中心に取り上げ文書管理規則等の内容を比較することにより現状分析を行った。その結果、以下の課題が明らかになった。第1に、文書管理規則等の設置背景がそもそも事務の効率化にあるため、情報公開や歴史的文書の保存を含めた文書のライフ・サイクルを保障するような内容でないということ、第2に、公立学校に特有の人事制度が原因で文書管理担当者が制度として確立されていないこと、第3に、公文書館が未設置であるために、文書管理規則等において移管先を指定することが不可能であることがあげられる。これらの現状を踏まえて、文書管理規則等を整備するための課題を提起する。
- 2008-05-30
著者
関連論文
- わが国の立法府における情報公開の新展開
- わが国の公立学校における記録管理の人的側面をめぐる現状と課題
- わが国の公立学校における制度としての文書管理の現状と課題
- 井上真琴, 『図書館に訊け!』, ちくま新書, 2004. 10, 253p., 740円, ISBN4-480-06186-X
- 図書分類よりみた日本文化思想の一段面
- 行政文書の管理に関する人的課題 : 諸外国の事例からみた国内の状況