周縁化される伝統 : バティックから見るジャワの近代(<特集>「布と人類学」)
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概要
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ジャワを中心に生産されるバティックはインドネシアを代表する文化項目の一つになっている。古くから続く手描きバティックの伝統に対して,19世紀中葉にはスタンプ技法が生まれ,その後バティックの生産性を大きく上昇させた。手描きの技法とスタンプ技法とを合わせ多くのバティック企業が育ち,バティック産業が発展した。この近代初期の伝統がいまや周縁化されつつある状況を本論文はかどることになる。1970年代から,蝋防染法を使わず一般のプリント技法を用いてバティック風の文様を染め上げたプリント・バティックが登場し,本来のバティックを圧迫していく。プリント・バティックをバティックと呼べるかどうかといった議論が起こるが,にもかかわらずその値段の安さによってプリント・バティックの生産量は全体の9割を占めるまでになる。1980年代は伝統バティックにとって衰退と試練の時期であった。にもかかわらず繊維製品特有の需要の細かな分節化ゆえに,様々な種類の伝統バティックが,自己の小さな居場所を確保していくことになる。それは周縁化された伝統と呼ぶべきものである。
- 日本文化人類学会の論文
- 2000-12-30
著者
関連論文
- 速水洋子著, Between Hills and Plains: Power and Practice in Socio-Religious Dynamics among Karen., 京都, 京都大学学術出版会, 2004年, xvi+385頁, 5,000円(+税)
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- C.ギーアツ著, 林武訳, 『二つのイスラーム社会 : モロッコとインドネシア』の翻訳について, 東京, 岩波書店, 1973, 230+xi.pp.