アジアの社会変動理論の可能性 : 費孝通の再読を通して
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概要
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今日の我々の関心は,アジアの社会変動をアジアにおける固有の歴史的経験と社会構造から説明することにある。1930・40年代は,アジアの社会学者・人類学者がアジアを自らの概念と方法でもって研究しようとした時代であった。彼らの研究のアスペクトは,今日の我々と共通するのではないかと考える。本論では,今日の我々の構想と方法を映し出してみるために,費孝通のアスペクトと概念の構成を検討する。費孝通は中国社会の構造を描き出すのに,母国語の語彙の中から個性的な概念を紡ぎだした。これは,人類学・社会学の一般概念が成立する本源への遡及と,母国の文化による概念の彫琢とを通じて可能となっている。つまり,中国社会を人々の観念の中から研究する個別主義と,中国社会研究から得た新しい知見でもって西洋の人類学・社会学の概念を再構築するという普遍主義とが相互に結び合って,費孝通のユニークな理論を構成している。
- 日本文化人類学会の論文
- 1996-12-30
著者
関連論文
- 細谷昂・菅野正・中島信博・小林一穂・藤山嘉夫・不和和彦・牛鳳瑞著『沸騰する中国農村』
- 村に住む宗教家たち(中国・過渡期の社会学)
- 費孝通著, 『郷土中国』, 初版 上海観察社, 1947 年, 再版 三聯書店, 1985 年, 97 頁, 0.60 元
- 山東義和団運動の社会的性格
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- 蘭信三著『「満州移民」の歴史社会学』