国際産学連携に関する一考察 : 研究開発人材確保の視点から見る日系企業と中国の大学との国際産学提携
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概要
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本稿は、グローバル化と知識経済化の急速な発展の中で、激しい国際競争に直面し、技術や市場の不確実化を克服するため、新たなイノベーションを実現しつつ、企業のコア・コンピタンスを高めて、国際競争優位性を構築しようとする多国籍企業、そして、教育と研究だけでなく、企業の問題解決に答えられるような高度な知識を提供するといった第三の役割が期待され、イノベーションを持続的に創造しながら、大学のコア・コンピタンスを高めようとする国際化された大学を主体として、国際産学連携をテーマに取り上げた。研究の目的は、国際産学連携に関する理論的考察を行うこと、そして、国際産学連携と人的資源管理の関係を整理した上で、イノベーションの担い手としての研究開発人材に着目し、日系企業と中国の大学の国際産学連携を事例とした国際産学連携の効果を考察することである。理論的考察に関しては、本稿は国際戦略提携理論と知識創造企業理論という二つの理論を根拠とし、また企業-大学間の知識提携、いわゆる産学連携理論にも着目して、国際産学連携の理論的考察を試みた。更に、国際産学連携と人的資源管理の関係を整理した。一方、事例考察については、筆者が2005年6月から9月にかけて行った日系企業と中国の大学の国際産学連携に関する調査をベースに、国際産学連携の研究開発人材確保の効果を探った。主に、共同研究開発、R&Dセンターの共同設立、ハイテク企業の共同設立といった三つの連携形態から国際産学連携の研究開発人材の確保効果を考察した。最後に、国際産学連携は企業が自身の戦略に基づき、イノベーションを実現する手段であるが、国際産学連携の効果(本稿では研究開発人材の確保効果をさす)は企業の戦略および大学のイノベーション能力によって異なってくることを試論した。
- 2007-09-30