現地利害関係者に与える多国籍企業の国民文化の影響
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概要
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本研究は、多国籍企業の持つ国民文化が、海外現地法人(1)の利害関係者(以下「現地利害関係者」とする)に与える影響を論じる。本国本社の属性と、本国本社から海外現地法人への資源移転に伴うそれらとの価値観の対峙に対する管理の重要性の認識および経験との相関を、実証研究を用いて明らかにすることが本研究の目的である。多国籍企業内の国際間の資源移転には、国際化と組織の複雑さに比例して多様な移転のパターンが存在する。特に本社から海外現地法人への移転に関しては従来から多く論じられてきたところである。しかしながら、多国籍企業と現地利害関係者との間の資源移転に関わる研究、特に知識や情報といった無形資源に伴う国民文化の価値観と、現地利害関係者の持つ価値観との対峙に対する関心については、その実態と対比すると不十分であると考える。その上グローバル規模で資源の獲得と配分に関する意思決定を行う本社の戦略的役割が強調される今日においては、本国本社からの資源移転の受け入れ側としての海外現地法人や現地利害関係者が直面する対峙の管理よりも、現地利害関係者や海外現地法人から資源移転を通じて本国本社が受ける対峙の管理にますます焦点が当てられている。すなわち、多国籍企業の海外現地法人は「本国本社の組織の一部という側面をもつ一方、独立した法人格を持つ現地の一企業という側面も持つ(吉原1989)」ものの、海外現地法人を本国本社の組織の一部であるという前提の下で本国本社の価値観の共有を論ずる傾向が強まっているということである。結果として、資源移転によって同じく影響を受ける現地利害関係者への影響が死角となり、彼らとの価値観の対峙が資源移転の成否に影響を与えるようになるのではないかと考える。よって、この死角に目を向けることが、円滑な資源移転に必要不可欠な条件であると考える。本研究は、海外現地法人への資源移転が本国本社によって行われる戦略上重要な行為であるならば、特に本社から海外現地法人への資源移転に伴う価値観の移転と現地利害関係者との価値観の対峙の管理を、海外現地法人のみに委ねるのではなく、本国本社がイニシアティブを発揮する必要のある課題である、と指摘する。この重要性を実証する為、日本自動車部品企業の本社へのアンケート調査によって、企業の属性と、国民文化同士の価値観の対峙に対する管理の重要性の認識とが相関関係を持つかどうかを探る。
- 国際ビジネス研究学会の論文
- 2007-09-30