総合商社の海外投資と所有政策 : 企業特殊優位性形成の観点から
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概要
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本稿では、総合商社の海外投資が、個々の事業戦略の一環という当初の意図を超えた全社戦略的意味合いを持つに至っているという自らの仮説について、総合商社の所有政策に関する先行研究のレビューを踏まえて考察すると共に、総合商社の海外法人を実証的に分析することによって検証することを目的とする。総合商社の海外投資には、他業種と比べ、(1)海外法人の多さ、(2)業種の多様さ、(3)形態の多様さといった特徴がある。なかでも「形態の多様さ」は総合商社の海外投資における特に重要な特徴であるとの認識に基づき、本稿では、総合商社の海外投資における所有政策について、表面的な直接出資比率によらず、間接出資の状況を加味した「実質出資比率」に基づき分析するものである。その結果、今や決して商権確保目的のマイノリティ出資が商社の所有政策の基本ではなく、マジョリティ出資の法人が全体の1/3以上を占めることや業種特性・戦略的位置付けに応じて出資比率・出資形態が異なること、またマイノリティ出資の海外法人には株主としての権利を補うべく人員派遣を積極的に行っている可能性があること等が明らかとなった。そして、多角的な海外投資と多様な資本所有形態が、本社と多数の海外法人との間における新たな情報・知識の流れやその文脈共有の土壌を育み、「学習の場」のネットワークを形成することで、特定の事業分野の戦略を超えた全社戦略的意味合いを持つに至ったとの類推が可能となった。こうした継続的かつ多様な海外投資の実施が、「創発的戦略」として総合商社の持続的成長のプラットフォームとなっている可能性については、海外駐在などを通じた商社内部の非公式な人的ネットワークが重要な役割を果たしてきたと思われる。それ故、こうした自然かつ柔軟に行われてきた情報・知識の共有をいかに意識的に実践・管理できるかが、今後の総合商社の企業成長における重要な課題と考えられる。
- 2007-09-30
著者
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