東京都多摩市の森林総合研究所多摩試験地および都立桜ヶ丘公園のチョウ類群集と森林環境の評価
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概要
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東京都多摩市の森林総合研究所多摩試験地と隣接する東京都立桜ヶ丘公園はともにコナラ-クヌギ林が過半を占め,多摩試験地では林床のササが放置され密生しているが,桜ヶ丘公園では林床のササを刈って管理している.この両地で2003年から2005年までトランセクト法によるチョウ類群集の調査を行い,チョウ類群集の比較を行った.多摩試験地,桜ヶ丘公園ともに3年間のセンサスで46種が記録され,種数では差がなかった.多様度指数も年較差はやや大きかったが,同一年の比較では2箇所で大差はなかった.両調査地間の類似度は比較的高かったが,林内に限って比較すると,桜ヶ丘公園の方が一部の草原性種や明るい林を好む種が加わるため,多摩試験地よりも種数が多かった.一方多摩試験地の林内ではクロヒカゲとヒカゲチョウの個体数が多かったため,生息密度は比較的高かった.各年および3年間の累計値に基づいたEI指数は,多摩試験地,桜ヶ丘公園ともに農村等に当たる「中自然」を示した.ER指数による評価は,2003年の多摩試験地は原始段階,2004年の多摩試験地および2003年と2005年の桜ヶ丘公園はERpsとERrsの値が近い原始段階的なパターン,2005年の多摩試験地は原始段階の値が強調された特異なパターン,2004年の桜ヶ丘公園は二次段階を示し,現状との不一致はあったが比較的高い自然度を示唆する結果が得られた.多摩試験地と桜ヶ丘公園には東京近郊の里山林的なチョウ類相が維持されていると評価できたが,ササ食のヒカゲチョウ族以外は個体数が少なかった.
- 2008-04-15