遍歴と局在のはざ間でせめぎ合う電荷・スピン・軌道自由度(第52回物性若手夏の学校(2007年度),講義ノート)
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概要
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固体中の電子が互いにクーロン斥力を強く感じながら運動する系-強相間電子系-では、見かけの単純さからは全く想像もつかないような多彩な物性が現れる。特に、電子相関の結果として電子が局在あるいは局在しかかった状態にあるとき、通常の金属には見られない異常な物性が、磁性や伝導・光学特性などに現れることがある。これは、電荷の自由度が凍結しかけたことによって、電子のもつ「別の顔」であるスピンや軌道の自由度が表に出てきて、種々の対称性の破れや揺らぎを通じてマクロな物性を支配するためである。こうした新奇な物性の発現メカニズムをミクロな視点から明らかにすることが、強相関電子系の研究における目標のひとつである。本講義では、急速かつ濃密に展開する強相関電子系研究におけるダイナミズムを、電子のもつ電荷・スピン・軌道自由度の競合と協調という切り口で紹介する。電子のもつスピンや軌道の自由度とは何か?それらはどのような場合にどのような形でマクロな物性に顕在化するのか?といった基本的な問いに答えることから始めて、研究のフロンティアにおける最新の話題まで議論する。具体的に取りあげるトピックは、3d軌道の電子が主役となる系のうち、e_g軌道あるいはt_<2g>軌道の縮退が重要な役割を果たしているペロフスカイト化合物、t_<2g>軌道の自由度と格子構造のフラストレーションが絡んだ面白い物性を示すスピネル酸化物、および巨大磁気抵抗効果を示すマンガン酸化物系などである。基本となる概念の学習と最先端の研究の間のギャップを埋めて、この分野に不慣れな方にも強相関電子系の研究の面白さを感じてもらえるようにしたい。
- 物性研究刊行会の論文
- 2008-03-20
著者
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