脳神経外科外来での痛みのとらえ方(<特集>痛みの脳神経外科治療)
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概要
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身体末梢からの痛み情報が身体脳(脊髄・脳幹・視床・体性感覚野など)に伝わる.身体脳ではそれを,経験的危険性や情動反応の候補,合理的判断,今後の予測など,すなわち認知機能を駆使して判断する.同時に情動脳(大脳辺縁系)では,過去の記憶との関連づけから何らかの情動情報を身体脳に送り出す.送られた情動情報と痛み情報から身体脳が創り出す身体的反応が痛み感覚であり,記憶されている痛み感覚を再体験しているのが痛み体験である.痛み体験はそれ自体心因性であり,痛み感覚の本質は,身体や精神が危害を被っているという痛み情報を認識した時に起こる,恐怖や怒りなどの陰性情動の身体化・行動化と考えられる.それが慢性痛になるかどうかは,各個人の認知機能や社会環境などで決まる.慢性痛に対する脳神経外科医のかかわりは,主に,痛み情報のmodulationに関係する部分と思われるが,痛み情報の質の変化が起こっても,痛み体験ができあがっている場合は,中枢側の記憶を弱めなければ,陰性情動のみで痛み感覚がよみがえる可能性がある.本稿では,痛みの本質をとらえるための理論的根拠を報告した.
- 2008-03-20
著者
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