食料資源問題の経済地理学的考察
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
世界の食料資源問題を経済地理学の観点から考察した。世界の主要な食料は米と小麦,およびとうもろこしなどの穀物が最も基本的なものである。米はアジア,小麦はヨーロッパ,とうもろこしはアメリカ大陸の主要な食料資源になっているとともに,地域的に偏在している。これらの食料は地域の環境条件,すなわち自然的条件,社会経済的条件,歴史的・文化的条件などによって,食料の生産,流通,消費にさまざまな地域性を生み出し,また,変容している。アジアモンスーンの米作は高温多湿の気候条件とモンスーンによってもたらされる水資源によって生産されるが,アジアで生産され,アジアで消費され貿易量の比率は小さく,アジアの人々を養う重要な食料となっている。一方,小麦は冷涼乾燥な気候条件と雨量の少ない高緯度地域で多く栽培され,世界に広く分布するとともに,貿易量も米に比較してはるかに多い。米と小麦の対照性はアジアとヨーロッパ(欧米諸国)の基本的な食料資源として世界の食料問題に大きな影響を及ぼしている。これに加えて,とうもろこしは直接的に人間の食料として利用される比率は少なく,大部分は家畜の飼料として利用されているが,土地資源の利用のうえからみれば人間の食料と家畜の飼料生産とが競合することになる。近年では代替エネルギーとしての利用が拡大しており,畜産との競合も懸念される。これらの主要な食料資源に加えて,畜産物と水産物が世界の食料資源問題に重要な影響をおよぼす。アジア型食体系の特徴は米を主体として水産物とを結合させたパターンが中心であり,ヨーロッパ型の食体系は小麦を主体として畜産物を組み合わせたパターンが中心であることを特徴としている。食料問題はこれまで,人口と食料との関係から論じられてきたが,21世紀には人口と食料の関係に加えて環境の問題を考えなければならない状況となっている。アジア型食体系とヨーロッパ型食体系がそれぞれに人口と食料と環境に適合した資源を有効に利用してゆくための地理的条件に見合ったものであることを再認識し,21世紀の食料資源問題への対応を考えてゆくべきであろう。
- 2008-03-15
著者
関連論文
- 地域特産魚養殖の意義と課題(日本水産学会水産増殖懇話会)(懇話会ニュース)
- 中国郷鎮企業の存立形態の地域的差異
- 食料資源問題の経済地理学的考察
- 飛騨地域における肉牛の産地形成とブランド化
- 地場産そばによる地域振興の成果と課題 : 福島県喜多方市(旧山都町)の事例
- 新エネルギーの地域循環と地域振興 : 岩手県葛巻町の事例
- ノリの市場条件変化と養殖産地の対応
- 日本の食材は今 : 水産物を中心に考える
- 輸入急増野菜の国内産地対応
- 国際化・情報化時代の水産加工業-27-水産加工業の存在意義と発展条件
- 国際化・情報化時代の水産加工業(26)カニの町--兵庫県香住町の水産加工業
- 国際化・情報化時代の水産加工業(25)水産加工業と地域経済の振興--石巻市の水産加工業
- 国際化・情報化時代の水産加工業(24)牡鹿半島の水産都市,女川町の水産加工業
- 国際化・情報化時代の水産加工業(23)かずのこ加工産地の展開過程
- 国際化・情報化時代の水産加工業(22)第9次漁業センサスからみた水産加工業
- クルマエビ種苗放流事業と地域漁業振興--静岡県浜名漁業の事例を中心に