司馬遷の経済思想 : 市場経済をめぐって(神谷力教授退職記念号)
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概要
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拙論「史記経済篇の研究」は愛知学泉大学の桑田幸三教授により翻訳され,1996年2月同大学の「経営研究」に掲載された。この論文は主として『史記』の経済篇すなわち「貨殖列伝」と「平準書」両篇の相互関係について分析・研究したものであった。桑田教授は翻訳にあたって,「20世紀末の時点に立つわれわれは,新しい視点に立って再出発すべきではないか」との示唆を与えられた。古典的史料に新しい解釈を目指す私は,今回は「市場経済」の角度から分析・研究を進めたい。私はひたすら司馬遷経済思想の研究に従事し,既に十余篇の関係論文を発表している。これらの研究にあたって,われわれは伝統的観念の束縛を受けてか,市場経済の角度から司馬遷の経済思想にアプローチすることなく,従ってその経済理論の価値の深層への接近を困難にしてきた。桑田教授によれば,司馬遷の経済思想とヨーロッパの例えばアダム・スミスの学説とは非常に類似しているという。桑田教授の司馬遷思想に対する高い評価は,現時日本市場経済の高度発展と直接関係しているのかも知れない。われわれが市場経済の角度から,司馬遷の経済思想に対して再検討を加えることは大変有意義なことと考えられる。