物理学者パスカル : 近代科学思想形成史の一断面
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概要
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数学者パスカルの業績は数学史家のひとしく評価するところであるし、また、特異なキリスト教護教家としてのかれの思想もまた、それなりの確固とした評価をえているといってよい。ところが、パスカルの物理学上の業績はかならずしも安定した評価をうけていないように思われる。たとえば、すぐれた科学史家ディクステルホイス(Dijksterhuis)は、その著作のなかで、パスカルの物理学的業績を高く評価し、「静水力学においてニュートンに匹敵する」とまでいっている。それに対して、フランスにおいても、パスカルの物理学的著作について、「剽窃」のレッテルを貼る批評家もひとりならず存在する。この批評はさすがに近年訂正されているが、物理学者パスカルの評価が動揺していることを物語っている。この論文は、パスカルの物理学上の業績の科学史的な正確な位置づけとその客観的評価のひとつの試みである。