福祉的<関係性>と援助の実践 : 社会福祉の実践基盤のための一試論として(高橋博久教授退職記念号)
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概要
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本稿では援助の実践場面で経験される、どちらが「援助者」でどちらが「被援助者」かが、当事者自身さえ認め難いような関係が成り立ち、福祉的な行為と感情との享受が同時的・相互的になされている状態としての「福祉的<関係性>」について考察することを目的とした。そこでまず心理的経験、とくに「同一化」と「同一性」の関係との比較、次いで知覚的経験における「イマージュ」概念あるいは「相貌」の知覚と「客観的世界」の関係との比較を行った。その結果「福祉的<関係性>化」は、両経験とは転倒した方向性をもっていることがわかり、これには近代市民社会における集合表象としての「個人主義」の関わりがあることを述べた。最後に、「福祉的<関係性>」の経験は、人と人との支え合いの始点へ実感を伴うかたちで経験させ、客体化された援助関係のあり方から援助当事者を解放させ、主体性を回復させる瞬間でもあること、その結果としてクライエントとの関係の再構成を促す基盤ともなりうるものと考察された。さらに、援助する側の専門性、援助される側の対象論的規定という、従来の制度的な捉え方を超える可能性を見出す契機になりうることを指摘した。
著者
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