多数決投票均衡とトップサイクルセット
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概要
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「多数決」は、民主主義を代表する制度の一つである。日本のような間接民主主義の国では、まず一般市民の多数の支持を得た政治家が、投票によって選出される。次に選出された政治家(議員)によって構成される議会において、多数決ルールの下で各議案が審議され、議決される。それらの議案の中には、政府の予算規模、各種公共財、税率等々、一般に財政学ないし公共経済学に密接に関連するものが多く含まれている。従って、多数決投票の機能を解明することは、財政学の重要な課題の一つであろう。本稿ではこの側面に分析の焦点をあてたいと思う。以下簡単化のために、議会内における単純多数決ルールを想定し、また各投票者(議員)は真の選好を表明するものとして分析する。問題は大別すると、次の二つの領域に分けられる。まず第一に、第一節から第三節においていくつかの若干異なった観点から、主に存在条件の吟味を通じて多数決投票均衡の存在の困難性を指摘する。次いで第二に、第四節において、トップサイクルセットという概念を取り上げ、均衡非存在の状況下でそれがどこまで有用な解概念たりうるかを、既存研究の批判的分析を通じて検討する。そして、それを踏まえて最後に、第五節では今後に残された検討課題とこの種の研究の現実的意味に言及する。
- 東京女子大学の論文