Bionatorが上顎骨の成長と歯列に及ぼす影響について
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概要
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本研究では,現在最も頻繁に用いられている機能的顎矯正装置の一つであるBionatorを適用した成長期のSkeletal Class II 患者における,装置適用終了後1年までの短期的な影響と後戻りを含めた変化について上顎の骨格系と歯系を中心に,Skeletal Class I およびSkeletal Class IIの対照群と比較検討することを目的とした。分析は装置適用開始時(T1),終了時(T2),終了後1年(T3)の3つの時期について側面頭部X線規格写真(以下,セファロと呼ぶ)のトレースを行い,セファロ透写図を作成し,同様にClass I群,Class II群に関してもT1,T2,T3に近似する時期のセファロ透写図を作成した。その後,線・角度計測を行い,T1,T2,T3の各時点,およびTIからT2,T1からT3における変化量について検討を行った。本研究においてBionatorは装置適用中に上顎骨前方成長抑制が認められたものの,適用終了後1年では効果はほとんど消失していた。しかし,前脳頭蓋底に対する口蓋平面および咬合平面は,Class I群およびClass II群に対して相対的に時計回り方向の回転が生じていることから,上顎骨に対して時計回り方向の回転を誘発する力が働き,成長方向を変化させていることが示唆され,Skeletal Class IIに対する歯系による補償治療を行いやすい形態へ変化させていることが推察された。