歯科用磁性アタッチメントの静磁場における骨形成への影響
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概要
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変動磁場や電気刺激による仮骨現象に対し,静磁場は吸引力を利用した歯科用磁性アクッチメント等に使用されているものの,骨誘導等の臨床応用には至っていない。本研究では,耐食既に優れ,0.5T以上の局所的で高密度の磁束を供給できる歯科用磁性アタッチメント磁石構造体を家兎脛骨に埋入し,静磁場の骨成長に及ぼす影響を組織学的に明らかにすることを目的とした。磁石構造体に用いられている磁性ステンレス鋼のSUS447J1は最も溶出イオンが少なく,純チタンに準じた高耐食性を示し,家兎脛骨における骨形成状態や骨との接触状態においても差は認められなかった。そこでSUS447J1をヨークとする着磁磁石構造体と無着磁磁石構造体を家兎脛骨に1,2,4,8,12週間埋入し,光学顕微鏡による組織観察を行い,骨の形成形態を調べた。着磁磁石構造体では,4週目に仮骨様組織の大半が既に石灰化の進んだ成熟骨に置換されているのに対し,無着磁磁石構造体ではまだ仮骨様組織が吸着面全域を覆っており,着磁磁石構造体よりも2週ほど骨形成の遅れが観察された。これらの結果より,静磁場刺激により内軟骨性骨化における軟骨基質や仮骨様組織の形成および成長が促進され,静磁場刺激のない組織よりも早い時期に石灰化と成熟骨の置換を始めることが明らかとなった。この原因は静磁場刺激が骨芽細胞の分化,活性を促進させ,早期の骨成熟を促したことによると考えられた。