ラット頭蓋骨表層より異なる酵素処理条件で得られた細胞集団の特性に関する検討
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概要
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骨には,骨膜中の細胞,骨芽細胞および骨細胞など様々な細胞集団が存在する。骨膜中の細胞は骨表面から離れるにしたがって幼若になると考えられ,骨基質の骨細胞は骨芽細胞が成熟した細胞である。しかしこれらの細胞の機能的差異について不明な点が多い。そこで本研究は異なる酵素処理時間により骨から得られた細胞集団の特性を明らかにすることを目的とした。異なる骨の細胞集団は,生後3日齢のラット頭蓋骨を摘出し,トリプシン・コラゲナーゼ酵素混合液による異なる処理時間の酵素処理により得た。それぞれの細胞集団は独立して培養し,細胞増殖,アルカリフォスファターゼ活性,石灰化組織形成および遺伝子発現について検討した。また酵素処理後の骨片をヘマトキシリン・エオジン染色にて検討した。その結果,骨膜から得られた細胞集団は骨基質から得られた細胞集団と比較して細胞増殖が高い可能性が示された。また骨膜から得られた細胞集団は長期培養により,高いアルカリフォスファターゼ活性およびアリザリンレッド染色陽性の石灰化組織形成能が高いことが示された。さらにRT-PCRによる遺伝子発現の検討では,これらの細胞集団間で,Runx2およびMMP2の遺伝子発現パターンが異なっていた。これらの結果は,骨膜から得られる骨芽細胞および前駆細胞を主体とする細胞集団と骨基質に埋もれる骨細胞を主体とする細胞集団では,その働きおよび作用に違いがある可能性を示している。