地域ケアシステムの再構築 : 市町村介護保険事業計画調査の結果報告
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概要
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日本の高齢者ケアの特徴は,他の先進国と比べ,施設の整備が遅れ,病院が施設の役割を果たしてきたことである。在宅重視を目指した介護保険が2000年4月に実施された。市町村は介護保険の実施に向けて介護保険事業計画を1999年度に策定した。本調査の目的は,介護保険事業計画において,地域ケアシステムの再構築をどのように計画したかを調査したものである。調査結果の概要は以下の通りである(有効回答870市町村)。1)要介護者等の見込みは,市町村でかなりの差があり,2000年で65歳以上人口比6.1〜21.0%,2002年で5.8〜21.7%,2004年で5.9〜22.3%と幅があった。2)在宅サービス利用対象者の見込みは,2000年で1.9〜16.5%,2002年で2.1〜17.0%,2004年で1.4〜17.7%と幅があった。3)施設サービス利用者の見込みは,2000年で1.4〜8.5%,2002年で1.4〜8.4%,2004年で1.4〜7.0%と幅があった。0.1%きざみで見たときに最頻値は2000年で2.8%とした市町村(52自治体),2002年で2.9%とした市町村(56自治体),2004年で3.4%とした市町村(75自治体)であった。また,全体の九割の市町村は2004年には施設サービス利用者の見込みを65歳以上人口比5%未満としている。これは,65歳以上人口比で5〜6%分の施設整備を終えた段階で地域ケア,在宅重視に政策転換した他の先進国と比べて,低い数値である。4)全体の一割の市町村は2004年に5%以上の施設サービス利用対象者を見込んでいる。これは寒冷積雪地,離島,過疎の町村に見られ,とくに北海道や沖縄で多い。国の計画は介護保険のサービス利用対象者は12.8%,在宅サービス利用対象者9.8%,施設サービス利用対象者概ね3.4%であった。しかし,調査結果では市町村によって相当な違いが見られた。全国的には低い施設サービス利用対象者を想定し,地域ケアシステムの再構築を行う方向である。また,高い施設サービス利用対象者を計画した寒冷積雪地,離島,過疎の市町村では,地域的特性に基づいた地域ケアシステムの再構築が課題である。
- 北翔大学の論文
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