関係要素に付加された日本語助詞「は」の対比性
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概要
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日本語の係助詞「は」が形容詞句や動詞句などの関係的要素に付加された際に持ちうる対比的意味について、認知文法(Cognitive Grammar)および用法依拠モデル(the usage-based model of language)の観点から考察を行った。まず、助詞「は」に関する重要な2つの先行研究であるKuno(1973)とShibatani(1990)の論を批判的に検討した。Kuno(1973)は「は」に主題的意味と対比的意味の2種類が存在すると論じた。一方Shibatani(1990)は「は」の中心的な意味は要素の強調にあり、対比的意味はある種の文脈効果に過ぎないと論じた。これに対し本研究では、「は」の対比的意味は参照点構造において常に内在する要素間関係が顕在化したものであるという仮説を提示した。この仮説を検証するため、大規模な日本語書き言葉コーパスから関係的要素に後続する「は」の用例を一定数採取して構文タイプに基づいた分類を行い、各タイプに属する用例が対比的意味を示している割合を集計した。その結果、明確な支配領域(dominion)を持った参照点構造を展開する構文タイプほど対比的な意味を持つことが明らかになった。これは上の仮説を強く裏付けるものと考えられる。