情報化投資評価方法論に関する研究
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概要
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バブル崩壊以降,企業ではコンピュータなどに代表される情報化投資の適切性を評価する必要が生じてきた。その背景は大きく次の4点に集約される。●かなり大規模な投資を必要とする情報通信システムに対する投資が,企業の本来的な目的にどの程度寄与しているか判らないため。●以前は,情報通信システムを構築する際の構成要素としての選択肢はメインフレームと呼ばれる大型コンピュータしかなかったが,近年では安価で高性能なワークステーションやパソコンなどの小型コンピュータが登場したことによって,選択肢の幅が広がり,それぞれの目的に最適な選択をしなければならなくなったため。●情報通信システムのもたらす効果が,単なる自動化や業務の効率化だけでなく,業務品質の高度化や従業員のやる気という定量的な計測が難しい分野にまで拡大してきたため。●バブル崩壊後の不況によって,コスト削減のため投資の規模と内容を見直さざるをえなくなったため。この様な背景で,情報化投資評価の必要性が強く認識されるようになったが,一般的には新規投資に対する意思決定時の評価だけが重要視される傾向がある。しかし,評価の本質はPDCAサイクルと同様に,事前評価と事後評価の双方が必要であることは言うまでもない。また,評価を正しく行うためには,情報通信システムの運営に要している費用の規模や目的を全て正しく把握することも必要となるが,実際には現状の把握すらできていない場合が多い。情報通信システムの投資評価を実施するためには,情報システム部門だけでなく,ユーザ部門の支援が必要となり,決して情報システム部門だけで実施できるものではない。これは,情報通信システムの支援機能の範囲が企業活動のほぼ全域に及んでいるためであり,健全な情報通信システムを構築し,運営するためには必須の要件である。実際には,情報通信システムに対する投資評価を実施している企業は少ない。特に少ないのが,投資に対する事後評価である。1993年の調査では,定期的に事後評価を実施している企業はわずか7.7%となっている。ところが,実際のシステムの発展度合との相関をみてみると,評価を実施している企業ほど情報通信システムが発展しているという結果もでている。なお,評価を実施していない最大の理由は,評価の仕方が判らないためとなっている。本稿で述べる内容は情報化投資評価のための方法論であり,以下の項目から構成される。●情報通信システム関連費用および効果の把握手法実際にかかっている情報通信システム関連の全ての費用および効果を把握するための費用分類の体系を実施するための運用手順である。●情報通信システム関連投資評価手法経済性工学に基づく財務的な評価手法と定性的効果を定量的に評価する手法(AHP)を情報通信システム分野に適用した評価のための体系および実施手順である。本手法は,事前評価と事後評価の双方に適用する。●費用削減/適正化のための管理体系実際に収集した費用や効果のデータを分析し,具体的なアクションに移るための検討時に用いる体系である。なお,費用を適正化するための高コスト要因を見極める指針についても示す。
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