所有構造,企業者インセンティブと日本的組織システム
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概要
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資産のコントロールに関する権利は2つの内容から構成されている。それは,契約に明記される特定請求権とそれ以外の契約に明記されない残余請求権である。契約の一方の当事者がもう一方の当事者のもつ資産に対する権利の行使を契約条項として網羅することが難しいのであれば,当該当事者がその権利の行使権を購入した方が好ましいであろう。オーナーシップはそれらの残余請求権の購入を意味する。このことは,しかし,残余請求権の誤った配分を引き起こし,好ましくない影響をもたらす。特に,所有権を奪われた企業所有者は,企業者精神ないし企業者インセンティブを喪失してしまうであろう。それは,残余請求権を購入された企業の生産性を著しく低下させる可能性もはらんでいる。ここでは,このような所有構造の変化が企業者精神ないし企業者インセンティブを喪失させ,投資インセンティブにどのような影響をもたらすかをみる。最終的に,特殊資本投資では企業者インセンティブが保持される所有構造でのみ投資インセンティブが高く,一般資本投資では企業者インセンティブが喪失する所有構造でも投資インセンティブは高く維持されるという結論を得ている。
- 小樽商科大学の論文
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