核反応のthreshold上下近傍のエネルギー領域を近似する相互作用とH^3 bound state
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概要
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我々は既に二核子散乱の問題で、低エネルギー領域に限る時、中間状態をdeuteron stateで近似するモデル(np散乱、J=1の場合)及びvirtual levelで近似するモデル(np散乱、J=0の場合)が、それぞれ現象の記述に有効であること、更にこの二つの過程に共通の結合常数とcut-offの値をとることが出来て、このモデルを統一的に把握することが可能なことを検討した。これらの基礎の上に立って、ここでは次の二つの仮定の下に、上述の相互作用の一般化を提唱する。即ち、第一は相互作用のisospin independenceの仮定の下に、上述のnp, J=0 stateのvirtual levelとのcouplingを、一般的に二核子、T=1, J=0 stateのvirtual levelとのcouplingに拡張し、TとJでsymmetricな二核子間相互作用を得る。第二に、この相互作用の適用範囲として、S行列の解析性の考察から、thresholdより下の領域においても、上の散乱領域における適用範囲程度の巾で(重心系運動エネルギーで〜20Mev)適用可能であると仮定する。核子間相互作用の飽和性より、核子の結合状態であるすべての「核」は充分この適用範囲に入る。従って我々は、核内核子と云う多くの適用対象をもつこの二核子間相互作用が、この範囲ではeffectiveに素過程と考え得るのではないかと云うことを提唱する。先ず問題の手始めに、この相互作用を仮定して、三体のbound stateを当ってみた。結果はパラメーターの値として、H^3 bound state g_<tc>^2/4π=0.308, g_<sc>^2/4π=0.0305, 〓=122 Mev, λ=235 MevをとることによりH^3結合エネルギーの値として^BH^3=11.0 Mevを得た。このうち、g_<tc>^2, g_<sc>^2, 〓の値は、二体の散乱問題の解析より得られた値を使用したものである。又λを〓に比べて大きくとらねばならない傾向は、Dn散乱のquartet state scattering length a_4の計算でも一致しており、g_<tc>^2, g_<sc>^2, 〓には前述の値をとりλ=300 Mev→a_4=2.90×10^<-13>cmこのa_4の計算値は実験値と矛盾していない。以上要約すれば、我々の相互作用モデルは現在迄の所、tensor forceを無視したpotential theoryとほぼ一致した結果を得ている。tensor forceを我々の相互作用モデルの枠の中へ取り入れる問題と、このモデルの必然性、或はリアリティの探求とは、今後に残された問題である。
- 素粒子論グループ 素粒子研究編集部の論文
- 1963-05-20
著者
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