兄弟の結合と家計戦術 : 近代沖縄における屋取の展開と世帯
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概要
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本稿の目的は、近代的状況における屋取の展開過程を、ミクロな社会過程のレベルで描き出すことである。屋取とは、首里・那覇の無禄士族層を中心とする人々が農村地域に形成した<部落>である。沖縄における人類学・民俗学的研究では、近世以前に起源を遡る<部落>(シマ・ムラ)については膨大な調査研究を蓄積してきた。これに対して、比較的新しく形成され、近代において展開した屋取はあまり注目されなかった。これは、従来の研究において、「近代」が軽視されてきた傾向の表われでもある。屋取研究は、これまでの研究の偏りを是正し、新たにテーマ領域を広げるものである。対象とするのは、19世紀末から20世紀前半における沖縄島南部のK屋取である。この時期のK屋取の特徴は、兄弟が協力して働き、土地を拡大していったことである。従って、兄弟関係のあり方と、それに関連する家計戦術が記述の焦点となる。従来の研究では、出自を重視する親族・家族構造の問題として兄弟姉妹関係が捉えられてきたが、本稿では、兄弟姉妹関係をそれ自体として捉える立場に立ち、兄弟関係を規制する規範と、規範が実践されるコンテキストを重視する。
- 日本文化人類学会の論文
- 2007-12-31