興奮を生み出し制御する : 秋田県角館、曳山行事の存続のメカニズム
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概要
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本稿は、日本の地方都市における祭りを対象とし、担い手の集団内及び集団間の社会関係が、祭りの存続といかに連関するかを分析する。事例の秋田県角館のお祭りヤマ行事は、曳山同士の激突をはじめとする複雑な構成を持つ祭りであり、地縁的な基盤を持ちながらも、より多様な人々が繋がり担い手となる都市的な性格を持つ。一方で、祭りの進行は限られた参加者の持つよりローカルな論理に依存しており、これが考察の主な対象になる。曳山の巡行過程である「曳き回し」は、各曳山の論理が拮抗しあう場である。本稿で取り上げる事例では、「ルール違反」の連鎖によって2台の曳山の間に激しい対抗関係が構築される。そこでは祭りの枠組からの様々な逸脱が発生するものの、同時にそれが過剰にならないように制御されるという事態が観察される。この過程は、曳き回しをめぐる複数の論理が時に矛盾しながらも並存していることによって可能になる。「あいまいさ」によって引き起こされた議論や対抗関係によって毎年の曳き回しは揺らぎながらも存続し、さらに祭りの秩序を重視する論理はこのサイクルを大きく破綻させないように制御する機能を果たす。そして論理の拮抗を生み出す「あいまいさ」の中で「自分のたちの祭り」を模索することが、参加者にとって大きな求心力となる。以上のようなメカニズムは、祭りの「正しさ」をめぐる絶え間ない交渉として捉えることができる。集団や個人といった様々なレベルにおいて祭りの価値が追求されることで、一定の秩序が維持されるともに、祭りが求心力を維持しながら生き生きと存続する原動力が生み出されるのである。
- 2007-12-31