第一コリント書におけるパウロの論敵についての一考察 : 社会的、文化的視点から
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概要
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パウロの論敵は、ギリシア・ローマ世界の社会的、文化的理想と価値観に依拠していた。このことは、彼らが「この世の知恵」を受容していること、神殿の食事に頻繁に参加していること、そして、彼らの主の晩餐での振る舞いから論証することができる。「この世の知恵」は、ギリシア・ローマ文化を根底から支えていた「修辞の文化」を示す。そこに見出される上流階級的価値観、理想に彼らは執着していた。神殿の食事は宗教的意義だけでなく、社会的、政治的意義ももっていた。それへの参加は、社会的、政治的安定や昇進にとって欠かすことのできないものであり、さらには、権力当局による祭儀システムに参与することを意味した。主の晩餐での混乱は、彼らが当時の食事会における上流階級的風潮(高慢さ、下層階級への軽蔑など)を共有していたことを示している。こういうわけでパウロの論敵は、この世の価値観、理想に心を奪われ、コリントのエリート文化に執着していたと言える。
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