欧州における民族的少数者保護規準の発展 : 効果的参加権・自治・集団としての権利をめぐって (西田毅教授古稀記念論集)
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概要
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民族的少数者の保護は歴史的に国境再編に伴って古くから行われていた。それらの自治の事例の中には、長期間機能している民族的少数者自治モデルの成功例が存在する。この事実は、自治は民族的少数者にとっては、国家権限の一部を移譲されることで同集団の意思が関係領域の統治に反映されるという点で一定の満足を得ることができ、同時に国家にとっては、国内紛争を回避し領土保全を維持することができる有効な手段であることを明らかにしている。ただし1990年以前の民族的少数者保護においては、国際的に共通の保護規準は成立していなかった。冷戦終結以降、CSCE/OSCEおよび欧州評議会を中心として、民族的少数者に関する保護規準を規定する文書および条約が採択された。それらの保護規準のうち、効果的参加権、自治および集団としての権利は、従前には見られない新たな保護規準である。そのうち効果的参加権については、欧州諸国の実行により、欧州の地域的慣習法として成立した。他方、民族的少数者の自治権および集団としての権利については、積極的に支持する諸国が存在する一方で、強く反対している諸国も存在する。しかし論理的には、効果的参加権、自治および集団としての権利は相互補完的である。欧州地域での民族的少数者をめぐる紛争において、自治が提案され、その実行が積み重ねられている。民族的少数者への自治の付与を規定する国際文書および条約の蓄積という事実は、民族的少数者の自治の実施が国家の義務である、との関係諸国の法的確信を示唆しているとみることができる。
著者
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