左右視野別呈示の顔・漢字に対する記憶探索 : 事象関連脳電位を用いた研究
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概要
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左右大脳半球におけるワーキングメモリの記憶照合操作を探るため,10名の実験参加者に刺激系列内で人の顔写真と漢字を無作為な順序で呈示し,短期記憶探索課題を遂行させながら事象関連脳電位(ERP)を記録した。記憶探索に関わる陰性電位変化は初期の視知覚に関わるN1成分の頂点後に後側頭部(T5・T6)優勢に始まり,その発達は顔(あるいは,漢字)呈示視野と反対側で同側に比べ約50ms先行した。顔刺激では探索負荷効果が刺激後400ms以降に観察された。両半球に発達した探索関連電位の収束過程には,顔・漢字とも呈示視野にかかわらず,有意な相違は見出せなかった。前頭部における陰性電位の発達は顔探索時に観察されたが,探索負荷効果はなく,刺激後400msには終了した。刺激呈示視野に対する大脳半球間で異なる後側頭部ERP応答は,ワーキングメモリ探索に要請される記憶表象が各大脳半球でそれぞれ保持され,操作が独立に関わることを示唆する。