8 県内地域保健医療研修施設における研修内容についての実態調査(第618回新潟医学会,新卒後臨床研修制度の現状と問題点)
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概要
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新潟県内の地域保健医療研修の現状と課題を探るため,新潟大学付属病院の研修協力病院8病院を対象にアンケート調査を行い,地域保健医療研修を「地域」と「保健」と「医療」の三つに分けて考えてみた.「地域」研修では,地域を理解し,患者を地域社会の住民として捉え,保健・医療・福祉を包括的・継続的に提供するという意義を,当該地域概論/地域医療概論として院長・事務長なかには医師会長や地域保健師により行われていた.地域研修には,地域内の院外指導施設の協力が不可欠であり,地域の診療所,訪問看護ステーションなどでの実践的研修,介護保険概論講義,介護保険施設業務,主治医意見書記載,退院時カンファレンスなどが院内外でおこなわれていた.訪問診療はすべての研修病院で実施され,巡回診療プログラムを有す病院もあったが,今後は医師会の協力を得て,地域在宅医療の全体像を意識できる研修も考えていくべきであろう.「保健」研修は,内容だけでなく研修期間の設定自体にばらつきがあり,試行段階であると思われる.「座学」や「健診」,「予防接種」,「健康講座」,「MC協議会」や「感染対策」などの活動だけでなく,その前にどのような考察や判断があったのかを実践的に理解させることが本来必要であり,臨床研修と保健研修を分離するのか並行型で行くのか等,今後の課題である.「医療」研修では「ひとりの患者を,その生活背景・退院後の生活・療養の介護負担の担い手まで思いをいたしながら,医療サービスをそのチームの責任者として全うさせる」という視点で,一貫した入院主治医となり,必要な医療行為はすべて自ら行わせるというスタンスで指導されていた.すべての研修医がこの地域医療の現場を経験することは極めて意義深い.将来の専門医たちが,ほんの一時期でも,地域医療の醍醐味を体験しておくことは,将来の地域医療支援の原資になるだろう.またこの研修期間中だけでも,若い前向きな医師が地域医療の現場にいることは,マンパワーとしても貴重であり,なによりも地域医療の現場が明るく活気付くという明確な効果がある.すでにこの半年で,地域医療の現場には研修医はなくてはならない存在になりつつある,というのが各現場の実感と思われる.今後は,今回のアンケート結果も踏まえ,ノウハウを蓄積してより望ましい標準研修プログラムを策定していきたい.
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