胚性幹細胞から成長ホルモン産生細胞への分化
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概要
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胚性幹細胞(ES)細胞は分化の全能性を有する細胞として知られており,各種細胞への分化が報告されている。今回,下垂体細胞,特に成長ホルモン(GH)分泌細胞への分化が誘導されるかをRT-PCRを用いて検討した。ES細胞においてPtx1,Ptx2など下垂体分化の初期から認められる転写因子の発現が確認されたが,GH遺伝子の組織特異的発現を直接調節するPit1遺伝子の強制発現のみでは,内因性GHmRNAの発現は認あられなかった。GHmRNAの発現は胚様体(EB)形成の有無では影響されず,フィーダーフリーの培養により経時的に増加することを確認した。さらに,通常マウスES細胞は,leukemia inhibitory factor (LIF)存在下でその多能性が維持され,LIFがない状態では分化するとされているが,LIF存在下でGHmRNAの発現は増強された。しかし,そのGHmRNAの発現は弱くES細胞は不均等一に分化したものであるため,全ES細胞を用いて性質を検討することが困難であった。そこで,GHプロモーター/エンハンサーの下流にGFPを連結したベクターを製作しES細胞に導入しGH産生細胞の選択を行った。FACSを使用した解析では,RT-PCRの結果と同様にLIF存在下でGFP陽性細胞の割合が高く認められ,GFP陽性細胞と陰性細胞に分離したところ,陽性細胞でGHmRNAの増加を確認した。今回われわれは,LIFの存在下で経時的にGH産生細胞が増加すること,下垂体特異的なGHプロモーター/エンハンサーを利用することにより,GHmRNA産生細胞を分離することが可能であることを示した。
- 神戸大学の論文
著者
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工藤 工
神戸大学医学研究科 糖尿病・代謝・内分泌内科
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工藤 工
神戸大学大学院 医学系研究科応用分子医学講座内分泌代謝・神経・血液腫瘍内科
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工藤 工
神戸大学大学院医学系研究科応用分子医学講座内分泌代謝・神経・血液腫瘍内科
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