書簡体小説の入れ子構造(巻下吉夫教授退職記念号)
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概要
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書簡体小説は18世紀英国における小説の確立とともに一大流行を謳歌し、19世紀初頭には一気に廃れ、さらに20世紀後半にファクシミリや電子メール、それに電子掲示板というコミュニケーション媒体の進化とともに再び控えめな脚光を浴び始めている。書簡が書き手自身乃至はその周辺で生じた出来事について語る媒体であり、内容的に自己中心的であることを考えるとき、日記とともに書簡は自伝的言説の下位範疇に分類することができる。そして、書簡が物語形式として小説に採用されるとき、自伝的小説や日記体小説がそうであるように、書簡体小説もまた入れ子物語の一類型として名を連ねることになるのである。本稿は、入れ子物語の多様な変異体、とりわけ自伝的な小説および日記体小説との比較分析から、書簡体小説の物語形式を特徴づけ、その物語効果を解明することを目指す。
著者
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