遷音速流を用いた擬似ブラックホールに関する研究 : ブラックホール物理の実証実験へ向けて(修士論文(2006年度))
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概要
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ブラックホール時空は、一般相対性理論の効果が最も顕著に現れる時空構造である。そのため、これまでにブラックホールが引き起こすとされる興味深い現象が数多く予言されてきた。しかしながら、これらの現象の多くは観測から直接実証することが非常に困難である。近年、これらの観測困難な現象を実験室で間接的に実証するためのモデルとして、「音響ブラックホール」と呼ばれる擬似ブラックホールが提案されてきた。ブラックホールの本質は、光を一方向にしか通さない「ホライズン」と呼ばれる構造を持つことである。これに対し「音響ブラックホール」とは、このホライズンの性質を「光」から「音」に置き換え、音を一方向にしか通さない音速点を持つ流れ、すなわち遷音速流を利用するものである。本論文では、(1)ブラックホールの量子論的な粒子生成現象である「Hawking輻射」と、(2)ブラックホールの放出する重力波を特徴づける「準固有振動」の2つに注目し、これらの現象を音響ブラックホールを用いて実証するための方法論を議論する。まず、(1)Hawking輻射については、輻射スペクトルがホライズン近傍における古典波の「引き延ばし」によって決まることを利用し、音速点近傍で変形を受けた音波の波形からHawking輻射のスペクトルを検証できることを示す。一方、(2)準固有振動については、遷音速流がブラックホールと同様に準固有振動モードを持つことを示し、実験において効率良くシグナルを検出するための方法について論じる。
- 物性研究刊行会の論文
- 2007-11-20
著者
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