摂動論的量子色力学における赤外発散と漸近的な長距離相互作用(総合報告)
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概要
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この論文では、摂動論的量子色力学(QCD)における赤外発散について、つぎの4点を中心に議論する。(1)赤外発散は長距離相互作用のみに依存し、短距離での相互作用に対して因子化(ただし、ハドロンごとではない)することができる。(2)赤外発散は観測にかからない軟グルーオンが放出されることに起因するとして、これらを考慮した断面積で発散を相殺させる従来の方法(Bloch-Nordsieck法)は物理的な意味をもたず、結合定数の4次以上では相殺もなりたたない。(3)長距離での振舞いによって定まる漸近状態を用いて散乱行列をつくると、始状態および終状態に色をもつ粒子がたかだか1個しかないばあいは、ユニタリティによって赤外発散は自明な相殺を示す。(4)色をもう粒子が複数存在する状態間の散乱では、粒子間の長距離相関がなくなるという条件のもとで漸近状態を構成すれば、結合定数の4次以下で赤外発散のない断面積が定義される。このさい、漸近状態のノルムの計算を通じて、観測される各粒子を質量殻上にある伝播関数で結ぶファインマン図が現れる。以上の論点は、多ハドロン反応では、因子化定理を仮定するQCDの高エネルギー反応の解析に疑義を呈するものである。
- 素粒子論グループ 素粒子研究編集部の論文
- 1986-05-20
著者
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