銅酸化物高温超伝導の機構
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概要
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層状のCuO_2面をもつ銅酸化物における高温超伝導体の母体,例えばLa_2CuO_4,YBa_2Cu_3O_<6.3>,Nd_2CuO_4など,は絶縁体ないしは半導体として知られている。これらのhalf-fillingの状態にある強く相関した電子系はハバード・モデルで記述されうると考えられるが,ドーピングなどによって低密度のキャリアー(正孔または電子)が注入されたときに発現する超伝導が問題の高温超伝導である。ここで提案される機構は,付加されたキャリアーの電荷密度の揺らぎ(プラズモン)を媒介とする引力がハバード・モデルの反発力を凌駕するときにクーパー対が作られて超伝導が生起すると考えるものである。提案されるモデルは,付加された低密度キャリアーの濃度の増加とともに有効ハバード相互作用が正から負に,そしてまた通常の正になるという,実験事実に符合した統一的な立場で現象を記述することができる。すなわち,付加的なキャリアーの濃度が0に近いときには,もとの反発力ハバード・モデルによって電子系は強い磁気的相関(銅酸化物においては反強磁性的)を示す絶縁体として説明される。キャリアーの濃度が適当に低い領域においては有効なハバード相互作用は負になり,高温超伝導が導かれる。また,キャリアー濃度がさらに高いときには,クーパー対を作る相互作用は小さくなって有効相互作用は再び正にもどり,超伝導は消滅する。そこではキャリアー系はもとの電子系に埋没して全系は通常の金属になる,という統一的な記述である。
- 物性研究刊行会の論文
- 1989-09-20
著者
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- R. E. Prange and S. M. Girvin, ed., The Quantum Hall Effect, Springer Verlag, New York, 1987, xvii+419p., 24×16 cm, 7,130円 (Graduate Texts in Contemporary Physics) [大学院向教科書, 専門書]
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