山村地帯における耕・草・林地の経済的土地利用 : 肉用牛繁殖経営の立地と定着要因
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概要
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農業限界地に立地移動しているわが国の肉用牛繁殖経営が,草地利用を基盤としてそこに定着しうるかどうかということを明らかにするため,繁殖牛飼養が展開している山村(岐阜県高根村)の事例調査をもとに,農業限界地における耕・草・林地の経済的土地利用について検討した。その結果,草地と林地の土地利用では,土地の収益性は野草地放牧(山林の下草利用)がもっとも低く,ついで牧草地放牧,人工林の順に高くなる。しかし,生産物(子牛及び木材)の価格動向及び繁殖牛部門の規模拡大による収益性の向上などを考慮に入れると,牧草地放牧の収益性が人工林より高くなる傾向がみられる。耕地の土地利用では,高標高のため水稲の収量がきわめて低く,他方繁殖牛部門の収益性が規模拡大とともに向上しているため,稲作より飼料作の方が有利になりつつある。また,草地(牧草地放牧)利用と耕地(採草用飼料作)利用を比較すれば,土地の収益性は耕地利用がはるかに高いが,労働生産性は草地利用が高い。そこで線型計画法を用いて所得の最大化を目標とした土地利用形態を求めると,草地と耕地の併用方式が経済的であるという結果を得た。以上のことから,農業限界地における繁殖牛飼養は,牧草地放牧(夏期間)と採草用飼料作を基盤にした展開の可能性をもっているといえる。ただし,調査地の場合,現在は野草地放牧を主体としているため,今後は,この野草地の人工草地化が課題となり,その資金調達が問題として残されている。
- 日本草地学会の論文
- 1981-04-30
著者
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