経済連携協定の下での新たな日本企業の戦略
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概要
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本稿は,グローバリゼーションの進展の下で,日本経済および日本企業がどのような変化を遂げ,また相互依存関係を深化させていったのかを論じたものである。とりわけ,分析地域をアジア諸国に限定し,1985年のプラザ合意以降から2001年までの円高・ドル安基調で日本企業がアジアへ生産拠点をシフトさせていった時期(第一ステージ)と,2000年代に入って締結が急がれている経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)の下での日本企業の展開時期(第二ステージ)に分け,考察を試みた。第一ステージと第二ステージの決定的な差異は,生産要素移動の自由化である。第一ステージでは,アジアにおける比較優位構造は雁行形態的な変化を遂げていることが分析されたが,近年になって雁行形態に変化が現れている。技術集約産業においてNIESおよびASEAN諸国そしてアジア経済のフロンティアといわれる,中国やベトナムが比較優位をもちつつあることが観察された。このような失速した「雁」を再生させる方法として,筆者は二つの方法を提示した。一つは,収益性の少なくなっているASEAN諸国からアジアの成長フロンティア諸国,たとえばベトナムなどに直接投資を移転させ,「雁」の飛躍の原動力を増加させることである。もう一つは,EPAを活用することである。EPAによって労働移動が自由化され,より安価な労働が入手でき,日本企業のさらなる成長が期待されるのである。
著者
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